Jun 6, 2011

生まれ変り

私は以前(第二次世界大戦前後)白人男性としてアメリカで生きていました。
私はエンジニア兼科学者でロケットの誘導装置を開発していました。

何故ロケットかと言うと、空を飛ぶものが好きだったからです。
アインシュタインのようなインスピレーションに満ちた男ではありませんでしたが、それなりに努力して優秀なエンジニアに成りました。
会社の中でロケットの開発部門に志願したのは、少なからず政治的な理由からです。
私はその頃頭角を現していた日本国の軍事的行動を怖れていました。
一人の生きている人間を神と崇めて、その下に一致団結する様子をニュース映画で見るたびに背筋が凍る思いがしたものです。
野蛮な彼の地の民は、それでもとても頭が優秀で、西洋の軍事テクノロジーを直ぐに体得して行きました。
それは現代で言えば、テレビSF番組スタートレックのボーグ(神経などの中にコンピュータを埋め込み無駄なく一致団結するように作られているサイボーグ集団)が攻めて来ているように感じたのです。
この迫り来る恐怖感もあり、かなり一生懸命仕事にせいを出していました。
しかしあれだけ不気味に思えた日本軍も戦争の日々が重なるにつれ疲労して行きました。

そんな私のもとにあるニュースが伝わります。
「我々アメリカの科学者が原子力爆弾を完成させた。」
実は量子力学がとても苦手でよく理解出来ていなかった私は、原子爆弾など出来るはずが無いとタカを括っていました。
「それが現実に出来てしまった」と言うことは、私の発明しているロケット誘導システムにはこの原子爆弾が備え付けられるように成るでしょう。
すると私は苦しくなってしまいました。 量子力学が実際に応用出来る筈が無いとタカを括っていた時とは世界が一変してしまいました。 
もうこれ以上ロケット開発はしたくありません。
どうした訳か、急にこのロケットシステムの被害になる人達のことが気に成り出しました。
国を守るという考えに支配されていた時には、全く感じなかった感覚です。

でも私にロケット開発が私に求められており、会社/上司/部下が期待しているのは誘導システムの完成です。 
「どうしたら良いだろう。」
幾ら考えても答えは見つかりません。
私の人生はいつしか悪夢のように成っていました。
私が関わったシステムに対する罪悪感と、会社/国の期待に応えなければいけないという義務感。
どちらかを解消すれば、もう片方が犠牲に成ってしまう。
仕事を断念する決断は出来ず、だらだら続けている内に私は病気になりました。
そしてあっけなく死んでしまうのです。
死ぬことはあまり残念でもありませんでした。 愛する妻は第一子の出産時に子供と共に亡くなってしまっています。

そして私は死んだ後、殆どその一瞬後にはもう一度生まれ変っていました。
そして私の母の顔を見たとき、何て美しいのだろうと驚き、昔のことはすべて忘れてしまいました。

これが本当の話かどうか、私自身に対してさえそれを証明する事は出来ません。
わたしが絶対確実に覚えているのは今回3歳の頃に、昔アメリカ人だった時の仕事を思い出した時の息苦しさだけです。

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